2010年に公開された松たか子さん主演の映画「告白」。原作は湊かなえさん著者の「告白」で、R15+指定の少々過激な表現が含む衝撃的な映画として注目を浴びました。少年犯罪、いじめ、また歪でもありどこかリアリティある人間関係をテーマにした作品で、松たか子さん演じる教師森口が一人娘を殺したのは、このクラスの中にいる。という驚くべき発言から復讐劇が始まります。
誰がみても引き込まれてしまう衝撃的な展開ばかりのこの作品。「告白」にまつわる重要なポイントを7つ紹介していきます。
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目次
映画「告白」を見て感じた
7つの重要ポイント(ネタバレあり)
その1:森口の母親と教師としての執念の強さ
この物語が始まるのは、森口自身が担任するクラスメイトの中に自分の娘を殺した犯人がいるという衝撃的な告白から始まります。そこから語られた犯人の特徴でクラスメイトたちは人物を特定し、森口が学校を去った後はその犯人に向けてイジメが始まります。
警察へ話しても少年法によって守られるその犯人には、しかるべき方法で復讐を目論んでいた森口。クラスへと暴露したのもイジメられるように仕向けていたり、調子よくさせておいて最後の時に1番の犯人が嫌がる方法で復讐を果たしたのも、命の重さをわかっていない犯人への戒めとして1番苦しむ方法ということをわかっていたからでした。
それは愛する娘を奪った犯人への復讐と最後の生徒に向けて教師として命の重さを皮肉にも同じやり方で教えた執念からだといえます。
その2:馬鹿になることで恐怖を忘れる生徒
終業式に告げられたクラスメイトが犯した殺人の告白。また担任が復讐として行った、犯人生徒2人の牛乳へHIV感染者の血液を混入したということ。そのことで、明るく馬鹿騒ぎをしていた生徒は一変してその犯人の2人への見る目を変えてしまいます。
そこからイジメがはじまり、担任森口がいなくなった後も新任となった担任の目を盗み「天罰」として制裁を行っていきます。新しい担任の前では以前のように騒ぐ変わらないクラス。しかしそれは以前とは違い、クラスに殺人を犯した犯人がいるということや、その犯人にはHIV感染者の血液がはいったという信じがたい事実はクラスメイトを一気に恐怖へと貶めます。あえて馬鹿騒ぎをすることによって現実から逃げ、普段のように明るく振舞うクラスの雰囲気は当たり前のように見えて、かなり異様なものとして作品の全体の雰囲気を作っているといえます。
その3:幼い頃からのコンプレックス
犯人の1人でもあり計画を企てたのはクラスメイトの修哉。大学の准教授である母親を持ち、母親は息子修哉へと自分の才能を受け継がせようと必死になるもそれができずに暴力を振るい、挙句離婚し修哉を捨てました。しかし修哉にとっては、「自分は母のようにできないから捨てられた」と思い続け、いつしか実力が認められ、母親が迎えに来てくれることを夢見ています。
そんな向上心もあり成績は優秀、発明品なども作り天才と呼ばれるようにもなりますが、それが母親の耳に入ることはなく、「大きなことをしなければ気づかれない」と思い、画期的な発明品を使って殺人を行えば母親に認めてもらえると思い、森口の娘を殺します。
元凶は母親への異常なほどの執着心。捨てられたというコンプレックスを認められなかった修哉は、現実から逃れるようにただ母親の愛だけを求めて犯行を重ねてしまったという皮肉な結末ですね。
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その4:息子と母親の異常な温度差
犯人のもう1人である直樹。平凡な家庭で育ちだれもから愛されるような存在ですが、実は劣等感などを感じて不満を爆発させているという男の子。犯行を知られ、体内にはHIV感染者の血液が流れているとしり、恐怖から自室にひきこもります。
それを心配する母親も今で言うモンスターペアレンツと呼ばれるもので、過度な期待を直樹に押し付け、息子はなにも悪くないと信じ続けていた母親ですが、息子の行いを知り、無理心中を行おうとするも直樹に殺されてしまいます。
過度な期待を押し付けられた息子はいい子でいようと頑張った故に卑屈に育ち、母親もそれに答えてくれる息子に対してさらに優越感を抱き、真実を見極めようとしなかった親子関係。
直樹は感染しないように心がけていたことを母親に壊されてさらに狂ってしまい、分かち合えないままだった親子関係は異常な温度差があったということかもしれません。
その5:時折流れる陽気な音楽
「告白」はずっと暗いシリアスな展開で進んでいきますが、途中の回想シーンはコミカルで陽気な音楽が流れ、不釣合いさが不気味な感じを醸し出しています。そんな不気味な感じに余計に作品にのめり込んでしまう仕組みには、怖いもの見たさを連想させる感じで目が離せません。
回想シーンで使われる陽気な音楽は、犯行を告白されたことによって今まで隠していた裏側を開き直って「子供」としてありのままの残虐さや軽率な考えなどを物語っているように聴こえていきます。
度々作中でいわれる「少年法」これは彼らがまだ子供であることを表していて、幼いそのままで育った彼らの内面を映し出したような、「命を軽視する」というのを表現している感じがして、より不気味に歪な空間へと作り上げているのでしょう。
その6:自信過剰の失敗
最後のシーン。修哉がコンクールで受賞した「命」という題名の作文を全校生徒の前で読み、読み終わったあとに仕掛けてあった爆弾で自ら共に大勢の生徒で死ぬことで、母親にそれほどまでの爆弾を作った優秀な息子、として注目してもらおうと目論んだ計画は、森口の手によって呆気なく失敗に終わりました。
この大舞台を成功させるために前夜に殺人予告や殺してしまった美月のことなどを話して、さらに話題になるようにと仕組みましたが、才能に溺れて自信過剰になりすぎたあまりに、森口の存在を忘れてしまった修哉は失敗します。
森口は修哉の嘘を見破り、挙句爆弾は彼が何よりも求めている母の元へ届けていたという絶望的な結末に終わりますが、それも彼が自信過剰になりすぎた結果。
自らの手で母親を巻き込んでしまったのも、唯一の理解者であった美月を殺害したのも、そして何よりきっかけにもなった森口の娘を殺したのも、自信過剰すぎて自分しか見えなかったという小さな失敗からの連鎖だといえるでしょう。
その7:簡単に変わる人の心の恐ろしさ
森口の告白によってクラスが一気に変わり、イジメが始まりました。今まで仲がよく、「悪」や「イジメ」とは無関係だったクラスは、身近にあった「殺人」や「HIV感染」というキーワードで180度変わってしまいます。表向きは仲がいいクラス。しかし裏では「制裁」という名目でイジメを繰り返すという歪な雰囲気は、信じがたい恐怖がクラス全員に浸透し、そういった雰囲気へと変わっていったからなのでしょう。
クラスメイトの美月ただひとりはそれには加わらずに「イジメ」をしなかった人物ですが、それも許せないクラスメイトは美月にもイジメをし始めてしまうというのも周りと同じようにしない美月が許せないからというただそれだけの理由で、罪のない美月を「制裁」してしまうのは、判断能力がなくなっているといっていいでしょう。
あるきっかけを元に人の心が簡単に変わってしまう。それはおそろしいことですが、それがあまりにも日常からかけ離れている信じがたい事実や恐怖だとするならば、余計に言えることかもしれません。
いかがでしたか?森口の「告白」から始まるこの映画。その告白内容で振り回される周囲の人間のほとんどは周りを見ておらず自分のことばかり、だといえます。
復讐劇や滑稽な人間関係も見所がある作品でもありますが、どこかリアリティがある生々しい人間の心情はたちまち作品に引き込まれていくものがあります。ポイントを抑えてもう一度見たり、まだ見たことのない人は是非見てみましょう。
まとめ
[ad#3]映画「告白」を見て感じた7つの重要ポイント(ネタバレあり)
その1:森口の母親と教師としての執念の強さ
その2:馬鹿になることで恐怖を忘れる生徒
その3:幼い頃からのコンプレックス
その4:息子と母親の異常な温度差
その5:時折流れる陽気な音楽
その6:自信過剰の失敗
その7:簡単に変わる人の心の恐ろしさ
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